デジタルカメラやスマートフォンの普及により、誰もが手軽に写真を撮影できる時代となりました。その流れの中で注目を集めているのが、ストックフォトサイトを活用した写真販売による副業です。ストックフォトとは、インターネット上に写真素材を登録し、必要な人が購入できるサービスのことを指します。
しかしながら、会社員の方にとって気になるのが副業禁止規定の存在です。多くの企業では就業規則で副業を禁止しており、ストックフォトでの写真販売が副業禁止に抵触するのではないかという不安を抱える方も少なくありません。特に、趣味の延長として始めた写真販売が会社にばれることで、処分の対象となることを心配する声も聞かれます。
そこで本記事では、ストックフォト販売と副業禁止の関係性について、法律面や実務面から詳しく解説していきます。写真販売を副業として安全に続けていくために、知っておくべき重要なポイントを分かりやすく説明していきましょう。

ストックフォトで写真を販売する際に、どのような法的な注意点があるのでしょうか?
ストックフォトで写真を販売する際には、主に3つの重要な権利に注意を払う必要があります。それは知的財産権、肖像権、そして施設管理権です。これらの権利を正しく理解し、遵守することは、安全に写真販売を続けていく上で非常に重要となります。
まず知的財産権について見ていきましょう。知的財産権の中でも特に注意が必要なのが商標権と著作権です。商標権については、企業やサービスのロゴが写り込んだ写真を販売することは避けなければなりません。例えば、街中で撮影した写真にファストフード店やコンビニエンスストアのロゴが写り込んでいる場合、その写真は商標権の侵害となる可能性が高く、ストックフォトサイトの審査でも落とされる可能性が高いでしょう。
著作権については、当然のことながら他人が撮影した写真を無断で使用することは禁止されています。X(旧Twitter)やインスタグラムなどのSNSで見かけた写真を無断で使用することも著作権侵害となります。また、多くのストックフォトサービスでは、販売する写真の著作権がサービス運営側に帰属すると規定されています。このため、ある写真を複数のストックフォトサービスで同時に販売することはできません。
次に肖像権についてです。肖像権は法律で明文化された権利ではありませんが、写真に写っている人の権利として非常に重要です。一般人であっても有名人であっても、特定できる人物が写っている写真を無断で販売することはできません。街中での撮影で意図せず人が写り込んでしまった場合でも、その人には肖像権があります。そのため、人物が写っている写真を販売する場合は、必ずモデルリリース(撮影・販売の許可証明書)を取得する必要があります。
最後に施設管理権について説明します。これは撮影場所となる施設に関する権利です。民法206条の所有権をベースとした権利で、施設で撮影した写真から生じる収益は、本来その施設の所有者に帰属します。そのため、観光施設や商業施設などで撮影した写真を販売する場合は、施設の所有者から許可を得る必要があります。具体的には、プロパティリリース(施設使用許可証明書)の取得が必要となります。
これらの権利に加えて、公序良俗に反する写真の販売も当然禁止されています。わいせつな画像や犯罪を助長するような写真は、ストックフォトサービスの審査で落とされるだけでなく、法的な問題に発展する可能性もあります。
ストックフォトでの写真販売は、一見すると手軽な副業に見えますが、実際には様々な法的な配慮が必要です。しかし、これらの権利を正しく理解し、適切に対応することで、安全に写真販売を続けることができます。多くのストックフォトサービスでは、これらの権利に関する詳しいガイドラインや規約を設けていますので、写真を投稿する前に必ず確認するようにしましょう。また、不安な点がある場合は、サービスの運営側に問い合わせることをお勧めします。
副業収入が会社にばれる可能性はありますか?どうすれば防げますか?
ストックフォトでの写真販売による副業収入が会社にばれるかどうかは、多くの方が不安に感じる問題です。結論から言えば、適切な対策を取ることで、会社に副業収入がばれるリスクを最小限に抑えることは可能です。ここでは、副業収入が会社にばれる仕組みと、その対策について詳しく解説していきます。
まず知っておく必要があるのは、副業収入が会社にばれる主な経路は住民税を通じてだということです。給与所得者の場合、通常は会社が住民税を給与から天引きする特別徴収という制度が適用されています。この際、副業による所得も合算して計算された住民税額が会社に通知されるため、同じ給与水準の他の社員と比べて住民税額が高くなることで、副業の存在を疑われる可能性があります。
しかし、この問題は確定申告時に適切な対応を取ることで防ぐことができます。具体的には、確定申告書の第二表にある「給与所得以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」欄で、「自分で納付」を選択することです。これにより、副業収入に対する住民税は普通徴収(自身で納付)となり、会社での特別徴収の対象から外れます。
ストックフォトでの写真販売による収入は、一般的に雑所得として扱われます。年間の所得が20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要ですが、住民税については金額の多少に関わらず申告が必要です。そのため、たとえ収入が少額であっても、住民税の申告は忘れずに行う必要があります。
住民税の申告時期は、毎年1月1日から3月15日までです。申告書の提出先は、お住まいの市区町村の税務課となります。普通徴収を選択した場合の納付時期は、一般的に第1期が6月末、第2期が8月末、第3期が10月末、第4期が翌年1月末となっています。期限内に確実に納付することで、滞納による問題を避けることができます。
また、医療費控除やふるさと納税による寄附金控除を利用する場合は注意が必要です。これらの控除がある場合、副業収入に係る住民税を普通徴収にできないケースがあります。そのため、これらの控除を受ける際は、副業収入への影響も考慮して判断する必要があるでしょう。
副業の存在を会社に知られたくない場合は、SNSなどでの情報発信にも注意が必要です。X(旧Twitter)やインスタグラムで写真販売の活動を公開すると、同僚や上司の目に触れる可能性があります。特に実名でアカウントを運営している場合は、より慎重な対応が求められます。
さらに、確定申告を税理士に依頼する場合も、副業の存在を会社に知られたくない旨を伝えておくことをお勧めします。税理士は顧客の意向を理解した上で、適切な申告方法を提案してくれるはずです。
このように、副業収入を会社に知られないようにするためには、主に住民税の面での対策が重要となります。ただし、これは脱税や所得隠しを推奨するものではなく、あくまでも法律の範囲内で適切に申告・納税することを前提としています。副業による所得は、正しく申告して納税する必要があります。
最後に重要な点として、会社の就業規則で副業が明確に禁止されている場合、これらの対策を取ったとしても、万が一発覚した際には懲戒処分の対象となる可能性があります。そのため、可能であれば人事部門に副業の可否を確認するか、就業規則の見直しを提案することも検討に値するかもしれません。近年は副業・兼業を認める企業も増えてきており、適切な申告と透明性のある副業活動が推奨される傾向にあります。
公務員でもストックフォトの副業はできますか?
公務員のストックフォト副業については、非常に慎重な判断が必要です。基本的に公務員の副業に関しては、国家公務員法や地方公務員法によって厳しく制限されています。ここでは、公務員がストックフォト副業を行う際の注意点について、詳しく解説していきます。
まず国家公務員の場合、国家公務員法第103条により、営利企業での役職や営利企業の経営が禁止されています。また、同法第104条では、営利企業以外の事業であっても、報酬を得て従事する場合は内閣総理大臣及び所轄庁の長の許可が必要と定められています。地方公務員についても、地方公務員法第38条により、同様の制限が設けられています。
ストックフォト販売の場合、これが営利企業における活動に該当するかどうかが重要なポイントとなります。写真をインターネット上で販売し、収益を得る行為は、基本的に営利活動として解釈される可能性が高いと考えられます。そのため、原則として許可なく行うことは難しいと言えるでしょう。
しかしながら、近年では公務員の副業に対する考え方にも変化が見られます。2019年3月には国家公務員の副業に関する規制が一部緩和され、地方自治体でも独自のガイドラインを設けて副業を認める動きが出てきています。例えば、奈良県生駒市では以下のような基準を設けて、公務員の副業を認めています。
- 公益性が高く、地域に貢献する活動であること
- 3年以上勤務している職員であること
- 勤務時間外や休日に活動し、報酬は常識的な範囲内であること
ストックフォト販売を副業として行う場合、これらの基準に照らし合わせて判断する必要があります。特に公益性の観点が重要で、単なる収益目的ではなく、地域や社会に貢献する内容であることが求められます。例えば、地域の観光資源や文化財を紹介する写真、地域の魅力を発信する写真などが、この基準に適合する可能性があります。
また、収入面での制限も重要です。公務員の副業として認められる場合でも、得られる収入は「常識的な範囲内」である必要があります。具体的な金額は自治体によって異なりますが、本業の給与に影響を与えない程度の金額に抑える必要があるでしょう。
ストックフォト販売を始める前に、必ず以下の手順を踏むことをお勧めします。
- 所属する組織の副業に関する規定を確認する
- 人事部門や上司に相談し、許可の要否を確認する
- 必要な場合は正式な許可申請を行う
- 許可された範囲内での活動に留める
特に注意が必要なのは、守秘義務との関係です。公務員は職務上知り得た情報を漏らしてはならない義務があります。そのため、業務に関連する場所や情報が写真に含まれていないか、十分に確認する必要があります。また、公務員としての信用を損なうような写真の販売も避けなければなりません。
公務員の場合、副業がばれて問題となるケースの多くは、収入の申告漏れや過大な収入を得ていたことが発覚したケースです。和歌山北消防署の消防士長が、X(旧Twitter)での動画投稿で約115万円の広告収入を得て減給処分を受けた事例なども存在します。
このように、公務員のストックフォト副業については、様々な制限や注意点があります。しかし、これは完全に不可能というわけではなく、適切な手続きを踏み、許可された範囲内で活動を行うことで、実現可能な場合もあります。重要なのは、公務員としての本業に支障をきたさず、公益性を重視した活動として取り組むことです。
ストックフォトでどのくらいの収入を得ることができますか?
ストックフォトでの収入については、多くの方が興味を持つポイントです。結論から言えば、収入は撮影する写真の質、数、そして販売戦略によって大きく変わってきます。ここでは、ストックフォトでの収入の実態と、収入を上げるためのポイントについて詳しく解説していきます。
まず、ストックフォトでの一般的な収入の仕組みについて説明します。主要なストックフォトサイトでは、写真が購入されると販売価格の一定割合が報酬として支払われます。例えば、PIXTAの場合、販売価格の一部がクレジットとして付与され、10クレジットが貯まると現金に交換できるシステムとなっています。他のサイトでも同様に、一定額に達すると振り込みが行われる仕組みが一般的です。
収入の目安として、趣味レベルでストックフォトに取り組む多くの方は、月額数千円から2万円程度の収入を得ています。これは、本業の傍らで時間を見つけて撮影・投稿を行っている場合の一般的な収入額です。もちろん、より本格的に取り組む方の中には、月に10万円以上の収入を得ている方もいますが、そのためには相当な時間と労力の投資が必要となります。
収入を上げるための重要なポイントとして、以下の要素が挙げられます。
1. 市場ニーズの理解
広告やウェブサイト、印刷物などで使用される可能性の高い写真を意識して撮影することが重要です。例えば、文字が入れやすいよう、写真の構図に余白を設けることや、季節感のある写真を時期に先んじて用意することなどが効果的です。
2. 品質の向上
ストックフォトサイトの審査は年々厳しくなっています。特に画質やノイズ、ホワイトバランスなどの技術的な面での要求が高くなっているため、撮影技術の向上は不可欠です。また、商用利用に耐える品質を維持することも重要です。
3. 継続的な投稿
写真は販売数が多いほど、収入が増える可能性が高まります。定期的に新しい写真を投稿し、常にポートフォリオを更新していくことが収入増加につながります。多くの成功者は、月に50枚以上の新規写真を投稿していると言われています。
4. 適切なキーワード設定
写真を見つけてもらうためには、適切なキーワード(タグ)設定が重要です。購入者が使用しそうな検索ワードを想定し、できるだけ具体的かつ関連性の高いキーワードを設定することで、写真が見つかる確率が上がります。
5. 複数のサイトの活用
ただし、同じ写真を複数のサイトで販売することは禁止されているケースが多いため、各サイトの規約をよく確認する必要があります。主要なサイトとしては、PIXTA、写真AC、Adobe Stock、Shutterstock、iStockなどがあります。
また、収入を考える上で重要な点として、税務上の取り扱いがあります。ストックフォトでの収入は一般的に雑所得として扱われ、年間の所得が20万円を超える場合は確定申告が必要となります。20万円以下であっても、住民税の申告は必要となる場合がありますので、注意が必要です。
収入を増やすためのテクニックとして、以下のような工夫も効果的です:
- 季節や行事に関連した写真を、その時期の2-3ヶ月前から投稿を始める
- ビジネス関連の写真(会議や握手、オフィスシーンなど)を重点的に撮影する
- 特定のテーマに特化して、そのジャンルでの専門性を高める
- SNSを活用して自身の作品をプロモーションする
ただし、収入を追求するあまり、著作権や肖像権、施設管理権などの権利を侵害することは避けなければなりません。また、本業に支障が出るほどの時間を投資することも、長期的には望ましくありません。適度な範囲で継続できる副業として位置づけることが、持続可能な収入を得るコツと言えるでしょう。
ストックフォト販売を副業として始めるには、具体的に何から始めればよいですか?
ストックフォト販売を副業として始めるためには、適切な準備と手順が重要です。ここでは、初心者の方がストックフォト販売を始めるための具体的なステップと注意点について解説していきます。
1. サービスの選択と登録
まず最初のステップとして、利用するストックフォトサービスを選択します。日本の主要なサービスとしては以下があります:
- PIXTA:日本最大級のストックフォトサービス。日本語対応で初心者にも使いやすい
- 写真AC:審査基準が比較的緩やかで、初心者でも始めやすい
- Adobe Stock:世界的な大手で、海外への販路も開ける
- Snapmart:スマートフォンだけで始められる手軽なサービス
サービスを選んだら、クリエイターとして会員登録を行います。多くのサービスでは、登録時に著作権に関する入門講座や入門テストの受講が必要です。これらは写真販売に必要な基礎知識を学ぶ良い機会となります。
2. 必要な機材の準備
基本的な撮影機材として以下が推奨されます:
- デジタルカメラ(スマートフォンでも可能ですが、高画質な写真が求められる場合も)
- 三脚(手ブレを防ぎ、安定した撮影が可能)
- 画像編集ソフト(Adobe Photoshopなど、基本的な補正ができるもの)
3. 撮影と編集のスキル向上
ストックフォトとして販売するためには、一定以上の品質が求められます。以下の点に注意して撮影・編集スキルを向上させましょう:
- 適切な露出とホワイトバランス
- シャープな画質(ピントが合っている)
- ノイズの少なさ
- バランスの良い構図
- 商用利用に適した余白の確保
4. 写真の投稿と審査対策
撮影した写真を投稿する際は、以下の点に注意が必要です:
- 画質要件の確認:各サービスが定める画質基準(サイズ、解像度など)を満たしているか
- 適切なキーワード設定:検索されやすい、関連性の高いキーワードを設定
- カテゴリーの選択:写真の内容に最も適したカテゴリーを選ぶ
- モデルリリース/プロパティリリース:必要な場合は適切な権利許諾書類を準備
5. 法的な注意点の確認
写真販売を始める前に、以下の権利関係を必ず確認します:
- 著作権:他人の作品を無断使用していないか
- 商標権:企業ロゴや商品が写り込んでいないか
- 肖像権:人物が写っている場合は適切な許可を得ているか
- 施設管理権:施設での撮影・販売が許可されているか
6. 収入管理と確定申告の準備
副業として行う場合は、以下の経理面での準備も重要です:
- 収入の記録方法の確立
- 経費(機材、ソフトウェア等)の記録
- 確定申告の必要性の確認
- 住民税の申告方法の確認
7. 継続的な活動のための工夫
安定した収入を得るために、以下のような取り組みを行います:
- 定期的な写真の投稿(週1回以上が望ましい)
- 市場ニーズの研究と対応
- 季節や行事に合わせた撮影計画
- 技術向上のための学習継続
また、副業として始める場合は、以下の点にも注意が必要です:
- 時間管理:本業に支障が出ないよう、撮影や編集の時間を適切に確保
- 活動範囲:会社の副業規定に抵触しない範囲での活動
- 情報管理:SNSでの活動を通じて副業がばれないよう注意
ストックフォト販売は、始めやすい副業である一方で、収入を得るまでには一定の時間と労力が必要です。しかし、適切な準備と継続的な努力により、安定した副収入源となる可能性を持っています。最初は小規模から始めて、徐々に規模を拡大していくアプローチが、副業として成功する近道と言えるでしょう。
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