スマートフォンの普及によって、写真撮影が身近になった今日、自分の写真を販売して収入を得る「ストックフォト」という選択肢が注目を集めています。趣味で撮った写真がお金になる、空いた時間で副業ができるなど、多くの魅力があるストックフォトですが、実際にどれくらい稼げるのか、どんな被写体を選べばいいのかなど、疑問も多いのではないでしょうか。
本記事では、ストックフォトで実際に高収入を得ているプロカメラマンのアドバイスや、売れる被写体の選び方、収益を上げるためのコツなど、ストックフォトで成功するための情報を詳しく解説します。趣味の写真撮影を収益化したい方、副業としてストックフォトを始めてみたい方はぜひ参考にしてください。

ストックフォトで本当に高収入を得ることは可能なのか?実績と収益の実態
「ストックフォトで稼げる」と聞くと、疑わしく思う方も多いかもしれません。しかし、実際にストックフォトで高収入を得ているプロカメラマンは確かに存在します。PIXTAでトップクリエイターとして活躍するN.さんは、ブログで公開している収入によると、PIXTAだけで月間約90万円、他のサイトも合わせると毎月約160万円の売上を達成しています。
「これはリアルな数値ですが、いきなりここまで駆け上ったわけではもちろんなくて、撮影にかかった経費と、写真の売上をしっかり管理して、何年もかけてここまで持ってきたというのが実情です」とN.さんは言います。
同じくトップクリエイターのU.さんは、「ストックフォトだけで月に30万円くらい稼げるようになったら、子どもを作ろうと思っていました」と当初の目標を語っています。そして実際に「去年の1月に出産したにもかかわらず、去年の収入がこれまでの人生で一番良かった」と成果を出しています。
しかし、こうした高収入は一朝一夕で達成されたものではありません。N.さんは「やればやっただけ売れるのですが、大事なのは継続することだと思います。だから、売れてる人は例外なく頑張っているはずです」と強調しています。U.さんも「写真の売上が安定して30万円程度になるまでは、それまでの撮影の売上を全て費やして、利益ゼロの状態で撮影に臨んでいました」と初期投資の重要性を語っています。
PIXTAのデータによると、ストックフォトの売上におけるプロカメラマンの割合はわずか8%。残りの大多数は会社員や自営業、学生、主婦といったアマチュアが占めています。これは、プロでなくても工夫次第で収入を得られる可能性を示唆しています。
ただし、ストックフォトの副業には「単価が低い」というデメリットもあります。大量の供給と需要により価格が抑えられているため、一枚あたりの収入は多くありません。そのため、高収入を得るためには量をこなす必要があるのです。
また、収入はサービスによっても大きく異なります。例えばPIXTAでは、クリエイターの種類によって報酬率が変わり、一般クリエイターで22%〜42%、専属クリエイターで30%〜53%、人物専属クリエイターで42%〜58%となっています。一方、Shutterstockでは15%〜40%、Adobe Stockでは33%とサービスによって異なるため、複数のプラットフォームを活用することも戦略の一つです。
高収入を得るためには、「ストックフォトは自分に対する投資です。写真は法律上、無形固定資産なので税金もかからないし、撮れば撮るだけ収入になります。利益が上がればその分をほかの投資に回す。そこからまた利益が上がれば……ということを続けていく。そのサイクルを考えてやっていく必要がある」とN.さんはアドバイスしています。
売れるストックフォト写真の被写体選びで押さえるべき3つのポイントとは?
ストックフォトで収入を得るためには、「何を撮るか」という被写体選びが非常に重要です。ここでは、売れる被写体選びのポイントを3つご紹介します。
1. 需要の高い被写体を理解する
ストックフォトで効果的に利益を得るには、どのような写真に需要があるのかを理解することが第一歩です。PIXTAの年間コンテンツランキングを見ると、ビジネス系の写真に常に高い需要があることがわかります。一方で、世の中の変化によって需要も変わるため、時事的な感覚も重要です。
U.さんは「”めんどくさいこと”に挑戦していますね。あまりほかの方がやっていない組み合わせに取り組んでみています。例えばお婆ちゃんを3人くらい集めて撮った素材は少ないので、そこを狙ってみるとか」と独自の視点を持つことの重要性を語っています。
特に人物写真は需要が高く、PIXTAのコミュニティマネージャーの内田さんは「主婦の方は、ご自分のお子さんの写真が多いですね。皆さんさすがにお子さんが最高の表情を見せるタイミングを良くご存知なので、自然で、良い表情の写真が非常に多いです。子どものの写真は『家族』や『幸福』といったテーマによく合致するので、ニーズが高いジャンルのひとつと言えます」と解説しています。
また、季節を先取りした写真も需要が高いです。企業やメディアは季節のイベントや風景を前もって計画し、そのための素材を早めに準備するため、クリスマスやハロウィン、春の桜や秋の紅葉などの季節イベントの写真は数ヶ月前から需要が高まります。
2. 利用シーンを想像した撮影をする
ストックフォトの多くは、ウェブサイトのイメージ写真や記事のアイキャッチ、提案資料の挿入画像などとして利用されます。そのため、写真を撮影する際には具体的な利用シーンを想像することが重要です。
例えば、ビジネススキルに関する記事コンテンツでは、オフィスでの写真が求められます。塾のウェブサイトでは、勉強している学生の写真に需要があります。このように、どのような状況を表しているのかがわかるように撮影することが売れる写真を作るポイントです。
広告デザイナーの小山さんは「具体的には、特定の店の名物メニューや、ひと目でそれとわかる有名商店街、特徴的な店舗の設備などは、探しても見つからない、あるいはイメージ通りのカットがないことも多い」と語っています。このように、特定のシチュエーションを表現した写真は重宝されるのです。
また、月刊「COMMERCIAL PHOTO」編集長の上松さんは「最近売れ筋の写真は、ストーリーやキャラクターを感じさせる写真が好まれるようになってきている」と指摘しています。パッと見ただけで「誰が何をしているか」がはっきりと伝わる写真だと選ばれやすいでしょう。
3. 幅広いバリエーションを用意する
ストックフォトで成功するためには、同じ被写体でも様々なバリエーションを用意することが有効です。小山さんは「同じアングルで時間帯の異なる素材が用意されていたので助かりました」と語っており、朝、昼、夜など、時間帯の異なる写真が求められることがあります。
N.さんも「アートディレクターさんから求められる写真の傾向として、以前は派手めなイメージのニーズが大きかったのですが、最近はInstagramっぽい落ち着いたイメージの素材を求められることが増えてきました。なので写真をアップするときには、バリエーションの一つとして色調をくすませたものを試しにアップしてみて、売れ行きとか売上の様子を見ることにしています」と多様なバリエーションの重要性を強調しています。
U.さんも「元々、呼吸をするように構図のバリエーションを撮るのが好きなカメラマンだったので、色々なバリエーションが求められるストックフォトは、始める前から向いてると思っていました」と語っています。
ストックフォトサービス比較!どのプラットフォームが最も高収入に繋がるのか?
ストックフォトサービスはたくさんありますが、それぞれ特徴やロイヤリティ率(報酬率)が異なります。ここでは、主要なストックフォトサービスを比較し、高収入につながるプラットフォームについて見ていきましょう。
1. PIXTA(ピクスタ)
PIXTAは日本最大級のストックフォトサービスで、約38万人ものクリエイターが登録しており、素材ダウンロード数は約85万件にものぼります。
販売価格:
- 640×480px:550円
- 2400×1500px:1,980円
- 3200×2400px:3,630円
- 5200×3900px:5,500円
ロイヤリティ率:
- 一般クリエイター:22%〜42%
- 専属クリエイター:30%〜53%
- 人物専属クリエイター:42%〜58%
PIXTAの魅力は、利用上の注意点や売れる素材作りのポイントをまとめた「PIXTAガイド」が充実していることです。特に「今取り組むのはコレ」という連載では、月ごとに需要の高い写真テーマを発信しているため、市場調査の手間が省けます。
N.さんやU.さんのようなトップクリエイターを多数輩出しているのもPIXTAの特徴です。日本向けサービスとして、日本市場に特化した需要を満たす写真が求められる傾向があります。
2. Adobe Stock(アドビストック)
Adobe Stockは『Photoshop』などを提供しているAdobeが運営しているストックフォト売買サービスです。世界中の人が利用しているため、写真数、ダウンロード数ともに多いのが特徴です。
ロイヤリティ率:33%
Adobe Stockの魅力は、『Lightroom Classic CC』や『Bridge CC』からも直接作品をアップロードできること。写真の加工から投稿までひとつのソフトで済むため、スムーズに作業が進みます。普段からAdobeソフトを使っている方には非常に便利です。
また、国際的なサービスのため、グローバルな需要に応える写真も販売しやすいのが特徴です。
3. Shutterstock(シャッターストック)
Shutterstockは世界最大級のストックフォトサービスで、高品質な画像が豊富にそろっています。
ロイヤリティ率:15%〜40%
Shutterstockの特徴は、作品を投稿するときの機能が充実していること。画像の推奨ワードが自動で出るだけでなく、複数のアイテムに情報をまとめて追加することも可能です。作品の「承認待ち」や「承認済み」などのステータスがひと目でわかる機能もあり、管理の手間が省けます。
またモバイル上のブラウザだけでなく、アプリからでも簡単に投稿できるため、スキマ時間に対応できるのも魅力的です。
4. その他のサービス
上記以外にも、iStock(15%〜45%)、写真AC(人物写真以外:3.25円、人物写真:11円)、photolibrary(29〜65%)、Snapmart(30%〜60%)などがあります。
特にSnapmartはスマホで撮影した写真を販売できるアプリのため、一眼カメラを持っていない方でも始めやすいのが特徴です。
どのプラットフォームが最も高収入に繋がるのか?
N.さんが月160万円の売上を達成している事例からもわかるように、ひとつのサービスだけでなく、複数のストックフォトサービスを利用することで収入を最大化できる可能性があります。
PIXTAは日本市場に特化し、ロイヤリティ率も比較的高いことから、日本語のタイトルやキーワードで日本向けコンテンツを販売したい場合に適しています。一方、Adobe StockやShutterstockは国際的なプラットフォームのため、グローバル市場に向けた写真の販売に向いています。
N.さんのように、ビジネスとして本格的に取り組む場合は、同じ写真を複数のプラットフォームで販売することで、売上を最大化する戦略が効果的です。ただし、各サービスの規約を確認し、専属契約の有無や独占販売の条件などに注意する必要があります。
ストックフォト初心者が陥りがちな被写体選びの失敗とその対策法
ストックフォト初心者がよく陥る失敗と、その対策法について解説します。
失敗1:トレンドの後追いに終始してしまう
内田さんは「コンテンツに関しては皆さんかなり研究されているようで『これは売れるのでは』という写真が出てくると、同時期に近いテーマ・品質の写真が増える傾向にあります。トレンドによって、以前よりも投稿作品が均質化しやすい傾向が出てきています」と指摘しています。
売れている写真を真似するのは勉強になりますが、人気の被写体は競争も激しくなります。たとえば、ビジネスマンが握手するような定番的な写真は、すでに高品質なものが多数存在するため、初心者が参入しても目立つことは難しいでしょう。
対策法: トレンドを意識しつつも、自分ならではの視点や特色を加えることが重要です。U.さんのように「あまりほかの方がやっていない組み合わせに取り組む」ことで、競争の少ないニッチな市場を狙いましょう。
また、PIXTAの「今取り組むのはコレ」のように、2〜3ヶ月後に需要が高まる写真テーマを先取りして準備することも効果的です。
失敗2:著作権や肖像権に関する問題を軽視する
ストックフォト販売で最も注意すべき点の一つが、著作権や肖像権の問題です。人物が写っている写真を販売する場合は、その人物から「モデルリリース(肖像権使用同意書)」を取得する必要があります。また、有名な建物やアート作品など、著作権のある被写体も注意が必要です。
これらの法的な問題を軽視すると、写真が承認されないだけでなく、最悪の場合は訴訟リスクもあります。
対策法: 人物撮影の際には必ずモデルリリースを取得しましょう。多くのストックフォトサービスではテンプレートを提供しているので、それを活用するとよいでしょう。
また、商標や著作物が写り込まないよう注意することも重要です。どうしても写り込む場合は、加工で消すか、別の撮影場所を選ぶようにしましょう。
失敗3:汎用性の低い被写体を選んでしまう
ストックフォトで求められるのは、様々な用途に使える汎用性の高い写真です。しかし初心者は、自分が芸術的だと思う写真や個性的な写真を投稿しがちです。
上松さんは「最近売れ筋の写真は、ストーリーやキャラクターを感じさせる写真が好まれるようになってきている」と指摘していますが、それでもあまりに個性的すぎる写真は使いづらいと言えるでしょう。
対策法: 写真を撮る際には、「この写真はどのような記事やウェブサイトで使われるか」というイメージを持つことが大切です。商業目的での利用シーンを想像し、幅広い用途に適した写真を撮影しましょう。
また、同じ被写体でも様々なアングルや構図で撮影しておくと、用途の幅が広がります。U.さんのように「呼吸をするように構図のバリエーションを撮る」習慣をつけることが効果的です。
失敗4:レタッチやキーワード設定を軽視する
撮影した写真をそのままアップロードしても、検索されなければ売れません。適切なレタッチを施し、検索されやすいキーワードを設定することが重要です。
対策法: レタッチでは、明るさや色味の調整、余分な要素の除去などを行いましょう。ただし、過度な加工は避け、自然な仕上がりを心がけることが大切です。
キーワード設定は、その写真が何を表しているのか、どのような用途に使えるのかを具体的に表す言葉を選びましょう。例えば「オフィス」だけでなく、「ビジネス」「会議」「チームワーク」「コミュニケーション」など関連するキーワードを幅広く設定することで、検索されやすくなります。
プロが教える!ストックフォトで高収入を得るための撮影・投稿戦略
最後に、ストックフォトで高収入を得るためのプロの撮影・投稿戦略をご紹介します。
1. 計画的な投資と収益管理
U.さんは「最初に制作費を使う覚悟を決めること」の重要性を語っています。また、「写真の売上が安定して30万円程度になるまでは、それまでの撮影の売上を全て費やして、利益ゼロの状態で撮影に臨んでいました」と初期投資の必要性を強調しています。
N.さんも「ストックフォトは自分に対する投資です」と述べ、計画的な投資の重要性を説いています。
戦略ポイント:
- 撮影機材や撮影場所、モデル代などの初期費用を見積もる
- 収支を細かく管理し、どの写真がどれくらい売れているか把握する
- 売れ筋の写真を分析し、次の撮影に活かす
2. 継続的な撮影と投稿
N.さんは「やればやっただけ売れるのですが、大事なのは継続すること」と語っています。また、「数字をしっかり見て、次の目標をきちんと設定し、達成していけば、確実に儲かるのがストックフォトです。実際かなり儲かります。でも、途中で諦めたら終わり。一度始めたら、ちょっとでもいいのでやり続けることが、収益を上げるうえで一番重要なことだと思います」と継続の大切さを強調しています。
U.さんも「強制的に撮り続ける状況を自分で作る」ことの重要性を語っています。
戦略ポイント:
- 定期的な撮影スケジュールを設定する
- 月に最低でも一定枚数をアップロードする目標を立てる
- スキマ時間を活用して、コンスタントに写真を撮影・編集・アップロードする
3. 複数のストックフォトサービスを活用する
N.さんはPIXTAだけでなく、複数のサービスを活用して月160万円の売上を達成しています。同じ写真を複数のプラットフォームで販売することで、収入を最大化できます。
戦略ポイント:
- 複数のサービスに同じ写真をアップロードする(各サービスの規約に注意)
- 各サービスの特性を理解し、適した写真を選択する
- 国内向け・海外向けなど、市場に応じた写真を用意する
4. 撮影技術とレタッチスキルを高める
売れる写真を撮るためには、撮影技術とレタッチスキルの向上が不可欠です。N.さんは「寝る間も惜しんで打ち込んでいた」と語り、技術向上に努めていました。
戦略ポイント:
- カメラの基本操作(F値、ISO、シャッタースピードなど)をマスターする
- 光の使い方や構図の基本を学ぶ
- レタッチソフトの使い方を習得し、自然で美しい仕上がりを目指す
5. 段階的な目標設定
N.さんは「月1万円からスタートして、次は5万円、それを達成したら10万円といった風に、短期的な目標設定を刻むことが大事」とアドバイスしています。大きな目標を一度に達成しようとするのではなく、小さな成功体験を積み重ねることが重要です。
戦略ポイント:
- 最初は小さな目標から始める
- 達成したら次の目標を設定する
- 売れた写真の傾向を分析し、次の撮影に活かす
6. ニッチな市場を狙う
U.さんは「めんどくさいことに挑戦している」と語り、他の人があまり撮らないような被写体や組み合わせを狙っています。競争の少ないニッチな市場を見つけることで、自分だけの強みを作り出すことができます。
戦略ポイント:
- 人気ジャンルでも独自の視点や切り口を見つける
- 需要はあるが供給が少ないテーマを探す
- 季節やイベントを先取りした写真を用意する
ストックフォトでの高収入は一朝一夕では達成できませんが、計画的な投資と継続的な努力によって、N.さんやU.さんのように月に数十万円、場合によっては100万円を超える収入を得ることも不可能ではありません。まずは「月1万円」という小さな目標から始め、コツコツと写真のストックを増やしていくことが成功への道と言えるでしょう。
コメント