近年、ストックイラスト市場は急速に成長しており、特にShutterstockは世界最大級のマーケットプレイスとして多くのクリエイターが注目しています。しかし、2020年の報酬体系改定により、多くの寄稿者が「改悪」と感じる変化があったのも事実です。それでも、適切な戦略と知識があれば、Shutterstockで安定した収益を得ることは十分可能です。本記事では、2025年の最新トレンドを踏まえながら、売れるイラストの特徴、審査対策、効率的な販売戦略について詳しく解説します。AI生成イラストの活用方法や他サイトとの併用戦略まで、成功するために必要な情報を網羅的にお伝えします。

Shutterstockで本当に売れるイラストのジャンルとテーマは何ですか?
Shutterstockで継続的に売れるイラストには明確な傾向があります。最も需要が高いのはビジネス用途のイラストで、プレゼン資料やウェブサイトの背景、アイコンなどが該当します。企業や広告代理店からの需要が安定しており、年間を通して購入される傾向にあります。
季節イベント関連のイラストも非常に人気が高く、クリスマス、イースター、誕生日、ハロウィンなどは毎年確実に需要が発生します。重要なのは、需要がピークに達する3〜5ヶ月前から制作を開始することです。審査に数週間から数ヶ月かかるため、最適なタイミングで表示されるよう計画的に準備する必要があります。
日常生活を切り取ったシーンも継続的に売れるテーマです。自宅やカフェでのリモートワーク、ペットとの生活、アクティブな日常など、多くの人々の生活と共通するビジュアルは幅広い用途で活用されます。特に2025年現在では、健康・ウェルネス、持続可能なライフスタイル、家庭菜園やオーガニック料理などのテーマが注目されています。
水彩画のイラストは時代を超えて人気が高く、心を癒すナチュラルな素材として安定した需要があります。野菜とフルーツ、お花、自然の風景などは「不変のテーマ」として、食品から化粧品まで幅広いパッケージで利用されます。水彩画との相性が良く、流行に左右されにくいのが特徴です。
2025年のトレンドとして注目すべきは、ニューレトロ(80年代〜90年代の日本デザインの再構築)、3D表現(ポップなキャラクターやキャンディカラーとの組み合わせ)、サステナブルデザイン(環境配慮をテーマにした自然モチーフ)です。また、PANTONE®の「モカ・ムース」や日本流行色協会の「ホライゾン・グリーン」といったトレンドカラーを意識した作品制作も効果的です。
Shutterstock審査に通りやすいイラスト制作のコツと注意点は?
Shutterstockは数あるストックサービスの中でも審査が非常に厳しいことで知られており、却下率が高いサイトです。審査に通るためには、技術的な要件と入力項目の両方で細心の注意が必要です。
技術的な要件で最も重要なのはEPSファイルの準備です。ベクター画像は4MP以上25MP以下のサイズ要件があり、推奨されるアートボードサイズは長方形の場合「幅3000px × 高さ2000px」、正方形なら「幅2500px × 高さ2500px」です。すべてのテキストはアウトライン化し、パターン塗りつぶしやブラシなどは[オブジェクト] → [分割・拡張]で必ずパス化してください。EPSファイルのバージョンは8または10に設定し、アートボード外にオブジェクトが1ピクセルでもはみ出さないよう注意が必要です。
カラーモードの管理も重要なポイントです。ドキュメントは必ずRGBモードで制作し、保存前に[編集] → [カラーを編集] → [RGBに変換]ですべてのオブジェクトをRGBベースに変更してください。保存時の「CMYK PostScriptをRGBファイルに含む」のチェックは必ず外します。
入力項目では、タイトルに5単語以上の英単語が必要で、同じ単語を5回以上使うと警告が出ます。作品と関連性のある説明的で具体的な英文を作成し、「○○ flat vector illustration」のように作品の種類を示すフレーズを追加すると効果的です。キーワードは20〜40個設定し、Shutterstockのキーワード候補ツールを活用すると効率的です。
商標関連の注意点として、「iPhone」「Twitter」「Olympic」など商標登録されたワードは使用できません。また、作品内に英語以外の文字が含まれる場合は、タイトル欄に「Translation:」と記載してすべて翻訳する必要があります。
類似コンテンツの却下も頻繁に発生します。Shutterstockは単純な色違いだけでなく、構図や背景が似ている場合でも厳しく却下するため、類似と認識されそうな作品はタイミングをずらして個別申請することが重要です。一度却下されると再承認は非常に困難なため、初回で確実に通すよう準備を徹底してください。
2025年のShutterstock報酬体系で稼ぐための戦略とは?
2020年6月の報酬改定により、Shutterstockの報酬体系は年間ダウンロード数に基づくランク制に変更され、多くの寄稿者が「改悪」と感じる状況となりました。現在の報酬レベルは6段階で、レベル1(15%)から最高のレベル6(40%)まで設定されています。最も厳しいのは毎年1月1日に全寄稿者のランクが強制的にレベル1に戻されることで、年始数ヶ月間は報酬が大幅に減少します。
現実的な報酬額を理解することが重要です。多くの寄稿者が報告するのは「1枚あたり$0.10(約10円)」という低単価で、最低支払額の$35に達するには350枚の販売が必要です。動画素材でも1本あたり$0.26〜$0.58という異常に低い報酬が報告されており、従来の報酬体系と比べて著しく低い水準となっています。
この状況で稼ぐためには圧倒的な登録数の確保が必須です。Shutterstockの強みは販売機会の多さにあるため、とにかく登録枚数を増やすことで売上の底上げを図る必要があります。毎日3枚以上のアップロードを習慣化し、定期的な投稿を継続することが推奨されています。
需要の高いテーマへの集中も効果的な戦略です。ビジネス用途、季節イベント、SNS向けキャラクターなど、確実に需要があるジャンルに特化することで、低単価でも安定した売上を確保できます。特に、素材が少ない分野では「出すだけで売れる」可能性が高いため、ニッチな市場を狙うのも有効です。
他サイトとの併用は必須の戦略です。Shutterstockは販売数は多いものの単価が低いため、Adobe Stock(より高単価)やPIXTA(日本市場で1枚200〜700円、時には1000円以上)など、複数のストックサイトに同じ作品を登録することで収益を最大化できます。PIXTAは特にバリエーション登録を歓迎するため、Shutterstockで却下されがちな色違い作品でも販売機会があります。
AI生成イラストをShutterstockで安全に販売する方法は?
2025年現在、AI画像の市場は急速に拡大しており、Shutterstockも積極的にAIコンテンツを受け入れています。AI生成イラストの最大の利点は制作スピードと効率性で、適切なキーワード入力により5分程度で画像生成から登録まで完了できる場合もあります。
主要なAI生成ツールとして、初心者にはConoha AI Canvas(クラウドベース、日本語サポート充実)、上級者にはStable Diffusion(ローカル環境、高カスタマイズ性)が推奨されています。ニュースで「売れるテーマ」を察知したら、AIを使って即座に対応できるのが大きなメリットです。
しかし、著作権侵害のリスクは十分に理解しておく必要があります。AIで生成されたイラストが、意図せず有名キャラクターやブランドロゴに似てしまうケースがあり、著名なアーティストの作風を模倣しすぎた作品もトラブルの原因となり得ます。Shutterstockの親会社BIGSTOCKでは2023年に著作権侵害トラブルが発生しており、AI生成コンテンツの著作権チェックの甘さが懸念されています。
安全に販売するための対策として、出品前の目視チェックの徹底が最も重要です。既存キャラクター、商標、有名なロゴなどとの類似性を必ず確認し、疑わしい場合はリタッチや再生成を行ってください。特に、ディズニーキャラクター、任天堂のキャラクター、有名ブランドのロゴなどは厳格にチェックする必要があります。
プロンプト設計の工夫も重要です。特定のアーティスト名や作品名を直接指定するのではなく、「カラフルな」「ポップな」「ミニマルな」といった抽象的な表現を使用することで、著作権リスクを軽減できます。また、生成後に自分なりのアレンジを加えることで、オリジナリティを高めることも可能です。
市場の現状認識として、イラスト市場はAIの影響で飽和状態にあるため、単純にAI生成イラストを大量投稿するだけでは成功は困難です。AIを効率化ツールとして活用しつつ、人間ならではの創造性や市場理解を組み合わせることが、持続可能な収益につながります。
Shutterstockと他のストックサイトを比較した最適な販売戦略は?
Shutterstockの特徴は圧倒的な販売機会の多さにありますが、極端に低い報酬単価という課題があるため、他サイトとの併用が現実的な戦略となります。
Adobe Stockは知名度が高く全世界をターゲットにしており、Shutterstockと比べて売れる確率は高く、単価も安定しています。審査はやや厳しめですが、ビジネス利用者が多いため高単価を狙える機会があります。IllustratorやPhotoshopユーザーが直接アクセスできる連携の強みもあり、特にベクターイラストの販売には有利です。
PIXTAは日本発のストックフォトで、日本市場に圧倒的な強みがあります。1枚200〜700円、時には1000円以上の高単価で販売できる可能性が高く、日本語でのサポートが充実しているため初心者にも使いやすいプラットフォームです。定額制や独占販売のON/OFF、販売サイズ選択など、ある程度自分で販売価値をコントロールできるのが大きなメリットです。
最適な併用戦略として、以下のアプローチが効果的です。まず、同一作品を複数サイトに登録することで、それぞれの市場特性を活かした収益化を図ります。Shutterstockで大量販売による数的収益を狙いつつ、Adobe Stockで高単価販売、PIXTAで日本市場での安定収益を確保するという分散戦略です。
作品の使い分けも重要なポイントです。Shutterstockは類似コンテンツに厳しいため、バリエーション作品はPIXTAに集中投稿し、オリジナリティの高い作品はAdobe Stockで高単価を狙うといった戦略的な配分が有効です。また、日本の季節感や文化に根ざした作品はPIXTAで特に高い評価を得やすい傾向があります。
リスク分散の観点からも併用は重要です。Shutterstockの2020年報酬改定のような突然の条件変更リスクを考慮すると、単一サイトへの依存は危険です。複数サイトに分散投稿することで、一つのサイトで問題が発生しても他でカバーできる安定性を確保できます。
効率化のコツとして、各サイトの審査基準や人気傾向を理解し、サイトごとに最適化した作品制作を行うことが重要です。例えば、Shutterstockの厳格な技術要件をクリアした作品は他サイトでも問題なく承認される可能性が高いため、最も厳しいShutterstockを基準に制作し、他サイトに展開するという手法も効果的です。
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