ストックフォトやストックイラストで収入を得ている方にとって、確定申告は避けて通れない重要な手続きです。特に2025年提出分(令和6年分)では、申告期限が2月17日から3月17日に調整されるなど、いくつかの変更点があります。
ストックフォト収入の確定申告では、所得区分の判断、適切な帳簿付け、経費の計上方法など、一般的な給与所得とは異なる複雑な要素が絡んできます。副業として取り組んでいる会社員の方も、本格的に事業として展開しているフリーランスの方も、正しい知識を身につけて適切に申告することで、無駄な税金を払うことなく、また税務署からの指摘を受けることもなく、安心してストックフォト活動を続けることができます。
海外サービスからのドル建て収入の処理、青色申告と白色申告の選択、会社に副業がバレないための住民税の処理方法など、ストックフォト特有の論点について、具体的な事例とともに詳しく解説していきます。

Q1: ストックフォト収入は確定申告が必要?副業でも申告義務はある?
ストックフォト収入がある場合の確定申告義務は、収入の規模と本業の有無によって決まります。まず基本的なルールを押さえておきましょう。
会社員が副業でストックフォトを行っている場合、年間の所得(収入から必要経費を差し引いた金額)が20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。この「20万円ルール」は、本業で適切に年末調整を受けていることが前提条件です。年末調整をしていない場合は、副業の所得金額に関係なく確定申告が必要となります。
注意すべき点は、所得税の申告が不要でも住民税の申告は別途必要ということです。副業収入が年間20万円以下で所得税の確定申告をしない場合でも、住民税については市区町村への申告義務があります。この住民税申告を怠ると、後々問題になる可能性があります。
フリーランスや専業でストックフォトを行っている場合は、所得金額に関係なく確定申告が必要です。基礎控除48万円以下の所得であれば税額は0円になりますが、申告書の提出義務は残ります。
複数のストックフォトサービスを利用している場合は、すべての収入を合算して判断します。Adobe Stock、Shutterstock、PIXTA、iStockなど複数のサービスからの収入がある場合は、それらを全て足し合わせて20万円を超えるかどうかを確認してください。
源泉徴収されている場合の注意点として、PIXTAなど一部の国内サービスでは源泉徴収税が差し引かれることがあります。この場合、源泉徴収税額は既に税金として納めた分ですので、確定申告をすることで還付を受けられる可能性があります。
2025年提出分の変更点では、申告期間が従来の2月16日〜3月15日から、2月17日〜3月17日に調整されました。また、定額減税として納税者本人に所得税3万円、住民税1万円の減税措置が適用される予定です。
副業でストックフォトを行っている会社員の方は、会社に副業が知られることを避けるため、確定申告書で住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」に必ず選択することが重要です。これにより、副業分の住民税納付書が自宅に郵送され、給与からの天引きを避けることができます。
Q2: ストックフォト収入は事業所得と雑所得どちらで申告すべき?判断基準は?
ストックフォト収入の所得区分は、活動の規模や継続性によって「事業所得」か「雑所得」かが決まり、この判断は税負担に大きな影響を与えます。
雑所得として扱う場合は、趣味の延長や小遣い稼ぎ程度の規模で行っている場合が該当します。具体的には、会社員が副業として月数万円程度の収入を得ているケースなどです。雑所得の場合、帳簿付けは収入300万円以下なら不要、青色申告の適用は受けられず、給与所得との損益通算もできません。
事業所得として扱う場合は、継続的かつ反復的に収入を得ており、その規模や労力投入が「事業」と認められる場合です。専業でストックフォトを行っている場合はもちろん、副業でも開業届を提出し事業として取り組んでいる場合は事業所得として申告できる可能性があります。
事業所得のメリットは非常に大きく、特に青色申告を選択することで以下の特典が受けられます。青色申告特別控除では、複式簿記で記帳し期限内に申告すれば最高55万円、e-Taxによる電子申告なら最高65万円の所得控除が適用されます。これは課税所得を直接減らす効果があるため、大幅な節税になります。
30万円未満の少額減価償却資産の特例により、カメラやレンズなどの機材を年間300万円まで一括で経費計上できます。雑所得では法定耐用年数に応じた減価償却が必要ですが、青色申告なら購入年に全額経費にできるため、キャッシュフローの改善にもつながります。
純損失の繰越しでは、事業で赤字が出た場合、その損失を翌年以後3年間にわたって各年の所得から控除できます。また、損益通算により、給与所得など他の所得と事業所得の赤字を相殺することも可能です。
判断基準として重要なのは、営利性、有償性、継続性、反復性があるかどうかです。具体的には、定期的に作品をアップロードしている、機材への投資を行っている、収益向上のための努力をしている、といった要素が評価されます。
開業届と青色申告承認申請書は、事業開始から2ヶ月以内に税務署へ提出する必要があります。青色申告の適用を受けたい年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出することも重要です。
事業所得のデメリットとして、複式簿記による記帳が原則として必要になるため、作業が煩雑になります。また、会社員が開業届を出した場合、失業時に失業手当の受給に影響が出る可能性があるため、慎重な検討が必要です。
最終的な判断に迷う場合は、税務署や税理士に具体的な状況を相談することをお勧めします。特に収入規模が大きくなってきた場合は、事業所得として申告することで大きな節税メリットを得られる可能性が高いです。
Q3: ストックフォト収入の帳簿付けはどうやる?外貨収入の処理方法も知りたい
ストックフォト収入の帳簿付けでは、発生主義による記帳が原則となります。これは、実際に入金されたタイミングではなく、売上が発生したタイミングで記帳することを意味します。
基本的な仕訳の流れは以下の通りです。まず、ストックフォトサイトでコンテンツがダウンロードされ報酬が確定した時点で、(借方)売掛金 10,000 /(貸方)売上高 10,000として売上を計上します。その後、実際に入金された際に(借方)普通預金 10,000 /(貸方)売掛金 10,000として売掛金を消し込みます。
振込手数料がある場合は、(借方)普通預金 9,800 /(借方)支払手数料 200 /(貸方)売掛金 10,000のように、手数料分を支払手数料として計上します。源泉徴収税がある場合(PIXTAなど)は、(借方)普通預金 8,759 /(借方)事業主貸 1,021 /(借方)支払手数料 220 /(貸方)売掛金 10,000として処理し、源泉徴収税は「事業主貸」勘定で処理します。
記帳の頻度については、青色申告では日々の記帳が推奨されますが、ストックフォトの場合は月ごとにまとめて記帳する方法でも問題ありません。各サービスから月次の売上データをCSV形式でダウンロードするか、管理画面のスクリーンショットで記録を保存しておきます。
外貨(ドル建て)収入の処理は、海外サービスを利用する場合の重要なポイントです。Shutterstock、iStock、Getty Imagesなど多くの海外サービスではドル建てで報酬を受け取るため、為替換算が必要になります。
為替レートの適用方法では、月ごとのドル建て売上に対して月末または月中平均のTTM(仲値)を使用することが一般的です。TTMレートは三菱UFJ銀行のウェブサイトなどで確認できます。PayPalへの入金時や日本円での出金時には、その取引日の為替レートを適用します。
為替差損益の計上も重要な処理です。売上発生時のレートで計上した金額と、実際の入金時のレートで再計算した金額との差額は、「為替差益」(勘定科目:雑収入)または「為替差損」(勘定科目:雑費)として計上します。例えば、$100の売上を1ドル=150円で計上した後、1ドル=148円で入金された場合、200円の為替差損が発生します。
PayPal口座の勘定科目は「普通預金」として処理するのが適切ですが、「未収金」や「預け金」として処理するケースもあります。重要なのは一貫性を保つことです。
会計ソフトの活用により、これらの処理を効率化できます。「マネーフォワード クラウド確定申告」「弥生」「freee」などのクラウド会計ソフトでは、銀行口座やクレジットカードの明細を自動取り込みし、仕訳を自動作成する機能があります。特に外貨取引の多いストックフォト収入では、為替レート自動取得機能のあるソフトが便利です。
データ保存と証拠書類として、各サービスの売上レポート、PayPalの取引履歴、銀行の入出金明細などは必ず保存しておきます。税法上、青色申告の場合は7年間、白色申告の場合は5年間の保存義務があります。
Q4: ストックフォトで経費にできるものは?カメラやソフト代は全額控除可能?
ストックフォト事業で「副業の売上に貢献している」と税務署に合理的に説明できる費用は、すべて必要経費として計上できます。適切な経費計上により課税所得を減らし、税負担を軽減することが可能です。
カメラ本体やレンズの経費処理では、金額によって処理方法が異なります。1個または1セットが10万円未満のものは「消耗品費」として、購入した年に全額経費計上できます。10万円以上のものは「備品」として固定資産に計上し、法定耐用年数(デジタルカメラは5年)に応じて減価償却費として複数年で経費計上します。
青色申告の特例として、「少額減価償却資産の特例」があります。これにより30万円未満の資産を年間合計300万円まで、購入年に一括で経費計上できます。例えば、25万円のカメラを購入した場合、青色申告なら全額その年の経費にできますが、白色申告では5年間の減価償却が必要です。
撮影関連の移動費用は「旅費交通費」として経費計上できます。撮影現場までの電車賃、バス代、タクシー代、車の場合のガソリン代、駐車場代、宿泊費などが対象です。ただし、撮影と関係ない観光や私的な用事の費用は除外する必要があります。
モデル費用・スタジオ費用も事業に必要な経費として認められます。人物写真の撮影でモデルを起用した場合の謝礼や、スタジオレンタル費用、撮影機材のレンタル費用なども経費になります。
通信費・光熱費・家賃の家事按分では、自宅の一部を仕事場として使用している場合や、プライベートと兼用の携帯電話代などを、事業で使用する割合に応じて経費計上できます。例えば、自宅の20%を仕事場として使用している場合、家賃や光熱費の20%を経費にできます。按分の根拠となる計算資料は必ず保存しておきましょう。
ソフトウェア関連費用として、Adobe Creative Suite、Lightroom、Photoshopなどの写真編集ソフト、会計ソフト、フォント購入費などは事業用であれば経費になります。月額制のサブスクリプション費用も、事業期間分を月割で経費計上できます。
その他の経費項目には以下があります。消耗品費として、プリンターインク、用紙、撮影用小道具、三脚、メモリーカード、バッテリーなど。宣伝広告費として、ポートフォリオサイトの制作費、名刺印刷代、展示会参加費など。研修費として、写真教室やセミナーの受講料、参考書籍代なども経費になります。
経費計上の注意点として、プライベートでも使用するものは適切な按分が必要です。また、経費の証拠書類(領収書、レシート、請求書など)は青色申告で7年間、白色申告で5年間の保存義務があります。
クレジットカード払いの経費も、事業用のクレジットカードで支払った場合は問題なく経費になります。プライベート用カードで支払った場合は、明細で事業関連の支出を明確に区分しておくことが重要です。
減価償却の計算例として、20万円のカメラを購入した場合を見てみましょう。白色申告では5年の定額法で、年間4万円ずつ減価償却費として計上します。青色申告で少額減価償却資産の特例を適用すれば、購入年に20万円全額を経費にできるため、キャッシュフローと税務上の両面でメリットがあります。
Q5: ストックフォトの確定申告書作成と提出方法は?2025年の変更点も教えて
ストックフォトの確定申告書作成は、「帳簿作成→申告書作成→提出」の流れで進めます。2025年提出分(令和6年分)では、申告期間が2月17日(月)から3月17日(月)に調整され、いくつかの重要な変更点があります。
必要書類の準備では、まず収入金額がわかる資料として、各ストックフォトサービスからの支払調書、通帳の入金記録、ウェブサイトの売上データのスクリーンショットなどを用意します。必要経費がわかる資料として、事業関連の領収書、レシート、請求書を年間分集計します。会社員の場合は勤務先の源泉徴収票も必要です。
各種控除の証明書として、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、医療費控除、住宅ローン控除などの証明書を準備します。ふるさと納税をしている場合、ワンストップ特例を申請していても、確定申告を行う場合は申告書に改めて記載する必要があります。
マイナンバー関係資料として、マイナンバーカードまたは通知カードなどの番号確認資料を用意します。書面提出の場合は運転免許証などの身元確認資料も必要です。
申告書作成の流れでは、事業所得の場合はまず「青色申告決算書」または「収支内訳書」を作成します。雑所得の場合は収入1,000万円以下なら収支内訳書の作成は必須ではありませんが、計算根拠として作成することを推奨します。
確定申告書第二表から作成し、所得の内訳、保険料情報、配偶者や扶養親族の情報を記載した後、第一表で税額計算を行います。事業所得は第一表の「事業」「営業等」欄に記入します。
住民税の徴収方法選択は、副業の場合非常に重要です。確定申告書作成時に表示される「住民税に関する事項」で、必ず「自分で納付(普通徴収)」を選択してください。これにより副業分の住民税納付書が自宅に郵送され、会社に副業が知られるリスクを避けられます。
2025年の主な変更点として、定額減税が実施されます。国内居住者で所得1,805万円以下の納税者は、本人分として所得税3万円・住民税1万円、扶養親族1人につき所得税3万円・住民税1万円の減税が適用されます。申告書上の「定額減税欄」への記載が必要です。
提出方法は3つから選択できます。e-Tax(電子申告)では、自宅から24時間いつでも申告でき、還付金の入金が約3週間と早く、添付書類の省略も可能です。マイナンバーカードを使ったマイナポータル連携により、控除証明書を一括取得して自動入力できるため、作業効率が大幅に向上します。
税務署窓口での直接提出では、特に確定申告期間の終盤は混雑するため、早めの提出を推奨します。郵送提出では、提出期限は消印日が有効となり、2025年3月17日の消印があれば期限内提出となります。紛失防止のため簡易書留での送付が安心です。
会計ソフトとの連携により、申告書作成を効率化できます。「マネーフォワード クラウド確定申告」「弥生」「freee」などから直接e-Taxで提出でき、スマートフォンからの申告も可能です。
申告後の手続きとして、所得税の納付期限は原則3月17日ですが、振替納税を選択した場合は4月23日、確定申告延納の場合は6月2日まで延納可能です。還付申告は過去5年間まで遡って提出できます。
青色申告特別控除の電子申告特典として、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存を利用すると、青色申告特別控除額が55万円から65万円に増額されるため、積極的な活用をお勧めします。
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