2025年11月20日、千葉県警察が生成AIで作成された画像の著作権侵害で全国初となる摘発を行いました。この事件は、神奈川県在住の27歳男性が他者の生成AI画像を無断で複製し、電子書籍の表紙に使用したというものです。生成AI画像であっても、人間の創作的関与が認められれば著作物として法的保護を受けることが明確になった画期的な事例といえます。これまで生成AIによって作られた画像の著作権については曖昧な部分が多く、法的な判断が待たれていました。今回の初摘発により、生成AIを活用するクリエイターやビジネスパーソンにとって、著作権に関する理解と対策がより一層重要になっています。本記事では、2025年の初摘発事例の詳細から、生成AI画像が著作物と認められた理由、文化庁のガイドライン、企業が取るべき対策、そして国内外の最新動向まで、生成AIと著作権に関する情報を網羅的に解説していきます。

2025年11月の生成AI画像著作権侵害 初摘発事例の概要
2025年11月20日、千葉県警察は生成AIで作成された画像を無断で複製したとして、神奈川県大和市に住む27歳の無職男性を著作権法違反の疑いで書類送検しました。この事件は、生成AIによって作成された画像が著作物として認められ、その侵害で摘発された全国初の事例として大きな注目を集めています。
容疑者は2024年8月、千葉県我孫子市に住む27歳の自営業男性が生成AIを使用して作成した画像を無断で複製し、自身が制作した電子書籍の表紙として使用した疑いが持たれています。容疑者は警察の取り調べに対して「画像が本のタイトルや内容に合っていたのでコピーした」と容疑を認めています。被害者である自営業男性は、生成AIに対して具体的かつ詳細な指示を繰り返し入力することで、この画像を作成していました。
千葉県警はこの制作プロセスを精査した結果、単なるAIの自動生成ではなく、人間の創作的な関与が認められると判断し、この画像を著作権法で保護される「著作物」と認定しました。警察は厳正な処罰を求める意見を付けて書類を検察に送付しており、この事件は日本における生成AI画像の著作権保護に関する重要な先例となる可能性が高いと見られています。
生成AI画像が著作物と認められた3つの理由
千葉県警が今回の画像を著作物と認定した背景には、明確な判断基準がありました。第一に、具体的な指示の繰り返しが挙げられます。被害者は生成AIに対して、単に簡単なプロンプトを入力しただけではなく、具体的で詳細な指示を何度も繰り返し入力していました。この過程において、被害者の意図や創作性が明確に反映されていたと判断されました。
第二の理由は、人間の創作的関与です。生成AIはツールとして使用されたものの、最終的な画像の出力には人間の創作的な判断と選択が深く関与していたことが認められました。被害者は様々な指示を試行錯誤しながら、自身の意図する画像を作り上げていったプロセスが評価されました。
第三に、独自性と個性の存在があります。完成した画像には、被害者の個性や独自の表現が反映されており、単なるAIの自動生成物とは異なる創作性が認められました。これらの要素が総合的に判断され、生成AI画像であっても著作物として保護されるという重要な判断が下されました。
2025年に発生したその他の生成AI関連著作権事例
2025年は生成AIに関連する著作権侵害事例が複数報告された年となりました。2025年1月23日には、神奈川県警が人気アニメ「エヴァンゲリオン」のキャラクターを模したポスターを生成AIで作成し販売していた男性2名を著作権法違反の疑いで書類送検しています。これは神奈川県内で初めてとなる生成AI関連の著作権侵害事件でした。容疑者らは生成AIに「エヴァンゲリオン」のキャラクター名や特徴を指示して画像を生成し、それをポスターとして商品化して販売していました。この行為は原作の著作権を侵害するものと判断されました。
また、2025年4月15日には警視庁が生成AIを使用してわいせつなポスターを作成・販売していた4名を全国で初めて逮捕しました。容疑者らは生成AIの技術を悪用し、わいせつな画像を大量に生成して販売していたとされています。この事件は、生成AIが違法なコンテンツの作成に悪用される危険性を示す事例として注目を集めました。
生成AIと著作権の基本的な考え方
文化庁は「AIと著作権に関する考え方について」という文書を公表し、生成AIと著作権の関係について重要な見解を示しています。まずAI学習段階における著作権については、AIの学習に既存の著作物を使用することは、一定の条件下で著作権法第30条の4により許容される場合があります。ただし、著作権者の利益を不当に害する場合には、この例外規定は適用されません。
AI生成物の著作権については、AIが生成した画像や文章が著作物として認められるかどうかは、人間の創作的関与の程度によって判断されます。単にAIに簡単な指示を与えただけでは著作物とは認められない可能性が高いですが、詳細な指示を繰り返し、試行錯誤を重ねて作成した場合には、著作物として認められる可能性があります。
AI生成物の利用における著作権侵害については、AIが既存の著作物に酷似した画像を生成し、それを無断で利用した場合、元の著作物の著作権を侵害する可能性があります。また、今回の初摘発事例のように、他人がAIを使って作成した画像を無断で複製・利用した場合も著作権侵害となります。
著作権法第30条の4の詳細解説
著作権法第30条の4は、デジタル化とネットワーク化に対応した柔軟な権利制限規定の一つとして位置づけられています。この条文は生成AIの開発と学習における著作物利用の法的根拠となっています。
非享受目的での利用について、著作権法第30条の4は、著作物を「享受」する目的ではなく、別の目的で利用する場合に著作権者の許諾なく利用できると定めています。AI開発における機械学習のためのデータ収集や解析は、著作物の表現を楽しむ目的ではなく、パターン認識や統計的処理を目的とするため、原則として第30条の4の適用対象となります。
ただし、著作権者の利益を不当に害する場合には、この例外規定は適用されません。具体的には、情報解析用データベースの著作物を本来の利用目的である情報解析のために販売されているにもかかわらずAI学習目的で無断複製する場合、著作権者が有償でAI学習用データとして提供しているにもかかわらず無断で利用する場合、著作権者が明示的にAI学習への利用を禁止している場合に無視して利用する場合などが該当します。
享受目的との併存についても注意が必要です。AI開発においても、学習データから創作的表現を出力させることを目的とする場合、つまり「享受」目的が併存する場合には、第30条の4は適用されません。例えば、特定のアーティストの作品を学習させて、そのアーティストのスタイルを模倣した画像を生成することを主目的とする場合などが該当します。
RAG(検索拡張生成)との関係も重要な論点です。RAGは外部データベースから情報を検索して、それをもとにAIが回答を生成する技術です。RAGで外部の著作物を参照する場合、その著作物の創作的表現を利用することになるため、単純な機械学習とは異なり、享受目的が認められる可能性があります。この場合、第30条の4の適用は慎重に検討する必要があります。
文化庁による公式ガイドラインの内容
文化庁は生成AIと著作権に関する理解を深めるため、複数の公式文書を公表しています。2019年10月24日に公表された「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方」では、著作権法第30条の4、第47条の4、第47条の5について基本的な考え方を示し、AI・機械学習と著作権の関係について法的枠組みの基礎を提供しています。
2024年3月15日には「AIと著作権に関する考え方について」が公表されました。これは文化審議会著作権分科会法制度小委員会が、生成AIの急速な普及を受けて取りまとめた文書です。有識者へのヒアリングやパブリックコメントを経て作成され、開発・学習段階におけるAI開発での著作物の利用と第30条の4の適用範囲、生成・利用段階におけるAIを使用した画像や文章の生成における著作権侵害の判断基準、生成物の著作物性におけるAI生成物が著作物として認められる条件という3つの段階に分けて詳細な考え方を示しています。
2024年7月31日には「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」が文化庁著作権課により作成されました。この実務的な資料では、AI開発者が著作権リスクを軽減するための具体的なチェックポイントと、権利者が自身の権利を守り行使するための指針が図表や事例を交えて分かりやすく解説されています。さらに2024年9月11日には「生成AIをめぐる最新の状況について」という著作権課による状況報告が公表され、国内外の動向や新たな課題について情報が提供されています。
AI開発者と権利者のためのチェックリスト
文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」では、AI開発者と権利者それぞれの立場から確認すべき事項が整理されています。
AI開発者向けのチェックポイントとしては、学習データの収集方法は適切か、著作権者の利益を不当に害していないか、享受目的での利用が含まれていないか、生成物が既存著作物に酷似していないか、商用利用における権利処理は適切かといった点が挙げられています。
権利者向けのチェックポイントとしては、自身の著作物がAI学習に使用される可能性の把握、AI学習への利用に関する意思表示の方法、権利侵害を発見した場合の対処方法、ライセンス契約の検討といった点が整理されています。
内閣府知的財産戦略推進事務局の取り組み
内閣府の知的財産戦略推進事務局は、2024年11月に「AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ-権利者のための手引き-」を公表しました。この手引きは、クリエイターや権利者が自身の権利を守りながらAI時代に適応していくための実践的なガイドを提供しています。手引きにはAI学習における権利者の選択肢、ライセンス契約の実務、権利侵害への対応方法、新しいビジネスモデルの可能性、国際的な動向といった内容が含まれています。
企業が負う著作権リスクの詳細
企業が生成AIを業務で利用する場合、複数の著作権リスクが存在します。学習データに起因するリスクとして、生成AIの学習に使用されたデータに著作権で保護された作品が含まれている場合、生成された画像や文章がそれらに酷似する可能性があり、企業がこれを利用した場合に著作権侵害の責任を問われる可能性があります。
生成物の利用に関するリスクとして、AIが生成した画像や文章を商業利用する際、既存の著作物との類似性が問題となる場合があります。特に、特定のキャラクターやブランドイメージを模倣するような指示を与えた場合、著作権侵害のリスクが高まります。
第三者の生成物の無断利用については、今回の初摘発事例のように、他者がAIを使って作成した画像を無断で利用することは明確な著作権侵害となります。インターネット上に公開されているAI生成画像であっても、無断で利用することは避けるべきです。
従業員による不適切な利用も重要なリスク要因です。従業員が業務でAIを使用する際、著作権に関する知識が不足していると、意図せず著作権侵害を引き起こす可能性があります。企業は従業員に対する適切な教育とガイドラインの整備が必要です。
生成AI利用における5つの実践対策
企業や個人が生成AIを安全に利用するために、以下の対策が推奨されています。
第一の対策は利用ガイドラインの策定です。組織内で生成AIを利用する際のルールを明確に定めることが重要です。どのような用途での利用が許可されるか、禁止される行為は何か、著作権に関する注意事項などを具体的に記載したガイドラインを作成し、全従業員に周知します。
第二の対策は生成物の確認プロセスの確立です。AIが生成した画像や文章を利用する前に、既存の著作物との類似性をチェックするプロセスを設けます。特に商業利用する場合には、複数の担当者による確認や、必要に応じて法務部門の審査を経ることが望ましいです。
第三の対策は出典の記録と管理です。AIで生成した画像や文章については、使用したAIサービス、入力したプロンプト、生成日時などを記録して管理します。これにより、後日著作権に関する問題が発生した場合の対応が容易になります。
第四の対策は著作権教育の実施です。従業員に対して定期的に著作権に関する研修を実施し、生成AIの利用における注意点を理解させます。最新の法的動向や判例についても情報を共有し、リスク意識を高めることが重要です。
第五の対策は専門家への相談体制の整備です。著作権に関する判断が難しい場合に備えて、弁護士などの専門家に相談できる体制を整えておきます。特に新しいビジネスモデルや大規模なプロジェクトでAIを利用する場合には、事前に専門家の意見を求めることが推奨されます。
AI生成物の著作物性に関する詳細な判断基準
AI生成物が著作物として認められるかどうかは、個別のケースごとに慎重に判断されます。文化庁や専門家の見解をもとに、具体的な判断基準が示されています。
プロンプトの内容と詳細度は著作物性の判断において重要な要素となります。ただし、単に長いプロンプトを入力すればよいというわけではありません。著作物性が認められやすいケースとしては、創作的な表現について具体的かつ詳細な指示を与えている場合、色彩や構図、雰囲気、スタイルなど表現の細部にわたって明確な指示がある場合、完成イメージを明確に持ちそれを再現するための具体的な指示を繰り返している場合があります。一方、著作物性が認められにくいケースとしては、単なるアイデアや概念を伝えるだけの指示、「美しい風景」「かっこいいキャラクター」など抽象的で一般的な指示、プロンプトが長くても創作的な表現の指示ではなく単なる説明や要望の羅列といった場合があります。
弁護士の福井健策氏の見解では、創作者が明確な「完成予想図」を持ち、それをAIに再現させるためにプロンプトを工夫している場合、AI生成物が著作物と認められる可能性が高まるとされています。
試行錯誤の過程も著作物性の判断において重要な要素です。著作物性が認められやすいケースとしては、生成された画像を確認しながらプロンプトを何度も修正・改良している場合、意図した表現に近づけるためにパラメータを調整しながら繰り返し生成している場合、複数の試行を経て最終的に自身の創作意図に合致する画像を得た場合があります。この試行錯誤の過程は、人間の創作的な判断と選択が継続的に関与していることを示す重要な証拠となります。
選択プロセスの創作性についても考慮が必要です。AIが複数の画像を生成した中から一つを選択する行為自体は、必ずしも著作物性を左右するものではありません。しかし、その選択が創作過程の一部として行われている場合には、プラスの要素として考慮される可能性があります。選択が創作過程の一部と認められる場合としては、複数の生成画像を比較検討し自身の創作意図に最も合致するものを選択する場合、選択した画像に対してさらに修正や調整を加える場合、選択の基準が明確で創作的な判断に基づいている場合があります。
依拠性の概念も重要です。AI生成において「依拠性」とは既存の著作物との関係で判断されるものです。依拠性が認められる場合としては、利用者が既存の著作物を認識している場合、その著作物の創作的表現を利用してAIに画像を生成させる場合、生成された画像が既存著作物の創作的表現を再現している場合があります。このような場合、既存著作物の著作権を侵害することになり、たとえAIを介していても利用者の著作権侵害責任が成立します。
著作権侵害の判断における実務的なポイント
生成AIを使用する際、著作権侵害を避けるための実務的なポイントがあります。既存著作物の模倣を避けることが重要で、特定の作品やキャラクター、アーティストのスタイルを意図的に模倣するようなプロンプトは避けるべきです。「〇〇風」「〇〇のスタイルで」といった指示は、著作権侵害のリスクが高まります。
生成過程の記録も重要で、プロンプトの内容、試行回数、修正の履歴などを記録しておくことで、後日著作物性や創作過程を証明する証拠となります。特に商業利用する場合には、この記録が重要です。
類似性のチェックとして、生成された画像が既存の著作物に酷似していないか、公開前に確認することが重要です。特に商業利用の場合には、専門家によるチェックも検討すべきです。
利用規約の確認として、使用するAIサービスの利用規約を確認し、生成物の権利関係や利用制限を理解しておくことが必要です。サービスによっては、商業利用に制限がある場合があります。
権利表示の適切な実施として、AI生成物を公開・利用する際には、AIを使用して作成したことを明示することが推奨されます。透明性を保つことで、後のトラブルを避けることができます。
国際的な動向と海外における訴訟事例
生成AIと著作権の問題は日本だけでなく、世界中で課題となっています。特にアメリカとEUでは、複数の重要な訴訟や法的整備が進行しています。
アメリカにおける主要な訴訟事例としては、まず画像生成AI「Stable Diffusion」をめぐってアーティスト集団が提起した集団訴訟があります。訴訟の争点は、学習データに既存の著作物が無断で含まれていたこと、生成された画像が既存作品と酷似していることなどです。この訴訟は、AI学習における著作権の扱いについて重要な判例となる可能性があります。
ニューヨーク・タイムズ対OpenAI訴訟では、ニューヨーク・タイムズが利用規約を変更してAI開発への記事データの無断使用を禁止した上でOpenAIを提訴しました。この訴訟では、記事データの無断使用に対する対価の支払いを求めています。大手メディアによる訴訟として注目を集めており、今後のAI開発におけるデータ利用のあり方に大きな影響を与える可能性があります。
2022年11月には、GitHub Copilotの開発に関してMicrosoft、GitHub、OpenAIに対する集団訴訟が提起されました。オープンソースコードを学習に使用したことがプログラマーの著作権を侵害する可能性があるという主張です。この訴訟は、ソフトウェア開発分野におけるAI利用の法的枠組みを示す重要な事例となっています。
Meta Llama訴訟では2024年から2025年にかけて重要判決が示されました。複数の著作者がMetaを相手取って提起した訴訟では、AIモデルの学習そのものがフェアユースと認められる重要な判断が示されました。裁判所は「市場の希薄化」がフェアユース判断における重要な要素であるとしました。この判決は、AI学習におけるフェアユースの適用範囲を示す画期的なものとなりました。
2024年6月のAnthropicに対する訴訟では、カリフォルニア北部連邦地方裁判所が一見矛盾するような判断を示しました。生成AIに対して初めてフェアユースを認める一方で、学習のために700万冊以上の書籍を保存する行為は侵害に当たると判断しました。この判決は、AI学習におけるデータ保存の方法についても検討が必要であることを示しています。
2025年5月には米国著作権局が、生成AIの学習における著作権問題を分析した詳細な113ページの報告書を公表しました。報告書では、AI学習は多くの場合変容的である可能性があるとしつつも、学習のための中間利用が自動的に許容されるべきとする主張には懐疑的な立場を示しています。この報告書は、今後の米国における法的整備の方向性を示す重要な文書となっています。
EUにおける法整備として、EU DSM(デジタル単一市場)著作権指令を通じて、AI開発・学習段階における規制が設けられています。この指令は、EU加盟国に対して著作権法の制定または改正を義務付けており、各国が独自の対応を進めています。ドイツ、フランス、イタリアなどの主要国では、AI学習における著作権の扱いについて具体的な規定が設けられつつあります。
国際的な課題として、法的基準の国際的な統一の困難さ、国境を越えて提供されるAIサービスへの対応、クリエイターの権利保護と技術革新のバランス、開発途上国も含めた国際的な合意形成といった点が浮き彫りになっています。これらの課題に対応するため、WIPO(世界知的所有権機関)などの国際機関を通じた協議が進められています。
生成AIの著作権侵害事例から学ぶべき教訓
2025年の初摘発事例やその他の関連事件から、重要な教訓を得ることができます。
AI生成物にも著作権が認められるという点について、これまで曖昧だったAI生成物の著作権について、今回の事例は明確な判断を示しました。人間の創作的関与が十分にあれば、AIを使って作成した画像であっても著作物として保護されることが確認されました。
無断利用は明確な違法行為である点について、インターネット上に公開されているAI生成画像であっても、それを無断で複製・利用することは著作権侵害となります。使用する際には必ず権利者の許可を得る必要があります。
商業利用には特に注意が必要である点について、趣味での利用と異なり、商業目的でAI生成物を利用する場合には、著作権侵害のリスクが高く、また損害賠償などの責任も重くなる可能性があります。
既存キャラクターの模倣は高リスクである点について、エヴァンゲリオン事件のように、既存の人気キャラクターを模倣するようなAI画像を生成・販売する行為は、明確な著作権侵害となります。
今後の展望と課題
生成AI技術の発展に伴い、著作権に関する法的整備や社会的なルール作りが急務となっています。
法的整備の必要性として、現行の著作権法は生成AIを想定して作られたものではないため、新しい技術に対応した法改正や解釈の明確化が求められています。特に、どの程度の創作的関与があれば著作物と認められるのか、より具体的な基準が必要です。
AI事業者の責任として、生成AIを提供する企業には、サービスが著作権侵害に利用されないよう、適切な対策を講じる責任があります。著作権を侵害する画像の生成を防ぐフィルタリング機能の実装や、利用者への教育などが求められます。
クリエイターの権利保護として、既存のクリエイターの権利を守りつつ、新しい技術の発展も促進するバランスの取れた制度設計が求められています。AI学習に自分の作品が使われることに対する対価の支払いなど、新しい権利保護の仕組みも検討されています。
2025年11月の千葉県警による初摘発は、生成AI時代における著作権保護の重要な転換点となりました。この事例により、適切な創作的関与があればAI生成物も著作物として保護されること、そして他人のAI生成物を無断利用することは明確な著作権侵害となることが示されました。生成AIは非常に便利なツールですが、その利用には著作権に関する正しい知識と慎重な姿勢が求められます。企業や個人は、適切なガイドラインの整備、従業員教育、専門家への相談など、様々な対策を講じることで、著作権侵害のリスクを最小限に抑えながら、生成AIの恩恵を享受することができます。今後も法的整備や社会的ルールの形成が進んでいくことが予想されますので、最新の動向に注意を払い、適切に対応していくことが重要です。

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